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    ■30■ ガード加工を見直す

    • 2010.12.20 Monday
    • 22:38
    JUGEMテーマ:着物 きもの

     

     ガード加工は各メーカーにより、多少の効果の違いはありますが、
    あくまでも数値的なもので基本的に大きな違いはありません。

    その特性について以下に整理してみました。

    1【水ジミ】
      雨やその他、手洗いの際の水しぶきなどに効果を上げている。

    2【油ジミ】
      撥油性については撥水より効果ははるかに低い。

    3【食べ物の汚れ】
      水性ではあるが油の混ざったものは防げない。

    4【飲み物など液状の食品】
      熱いものや、酸味のものは浸透する。

    5【湿気・蒸気】
     ガードとは無縁に浸透する。

    6【汗】
     流れる汗は水ジミ同様にガードしてくれる。
    しかし体内から蒸気として発汗されるものは、蒸気同様に浸透する。
     また手の平の汗は油脂と共に付着する。
    放置しておくと特に紺地や濃い紫地の場合は変色する。

    7【縮み】
     水濡れによる縮みは防げるが、蒸気や湿気による縮みは防ぐことはできない。

    8【カビ】
     湿気が浸透するため防ぐことはできない。
    ただし、カビの除去はシミと同様に比較的容易になる。

    9【シミ落とし】
     加工後に付いたシミは、水性油性を問わず落としやすい。

    10【染め替え】
     浸染(焚き染)の場合は、温度を上げることにより染め加工は可能。
     引き染の場合は浸透剤の併用で同じく可能。

    11【通気性】
     水滴は通さないが空気は通るので通気性は変わらない。

    12【風合い】
     ガード加工単体ならさほど影響はないが、
    柔軟仕上げ剤を通したものとの複合で風合いは変わるようである。

    13【ガード抜き】
     染め替えのためや、その他加工の前処理として「ガード抜き」工程はあるが、
    浸透剤により一時的に効力をなくすものであり、完全に除去できるものではない。

    14【持続性】
     ガード加工は簡単には除去できないため、持続性は良いということになる。
    しかしガード液はフッ素樹脂のため、
    ドライクリーニングを繰り返していけばその効力は次第に落ちていく。

     特にドライクリーニング(丸洗い)の洗剤(界面活性剤)の残留により、ガード効果は著しく落ちる。
    しかしその場合は「洗い」に問題があるため、再洗いで残留物を除去すればその効果は復活する。

     また表面のホコリや汚れの付着でも効力が落ちることはあるが、
    この場合でも洗いとプレスでガード効果は戻る。

     さらにシミ落としの際のベンジン洗いや浸透剤でもガード効果は著しく落ちる。
    この場合はアイロンなどの加熱でその効果は復活する。

    15【色落ち対策】
     水濡れによる色落ち対策には効果はあるが、摩擦による色落ちは防げない。


     以上15項目のうち1【水ジミ】と、9【シミ落とし】の2件がガード加工の特色で、
    大きなメリットになります。

     この2つの項目以外は、ガード加工に対して期待を大きく持ちすぎないよう。
    また誤解を解消していただくために書き上げてみました。
    今一度、正しいご理解をいただきたく思います。

     仕立て下ろしの着物が大雨にあった。
    初めての着用なのにパーティーなどで飲み物をかけられた。
    などの出来事で、たった1度の着用なのにやむなく解き洗い張りをせざるを得なかった。
    このような事態を私は何度も目の当たりにしました。

     そのためにもガード加工は安心材料だと思いますね。

     またシミや汚れが付きにくいのと、後々のお手入れも簡単で、
    安価で済ませる事が出来るのも大きなメリットではないでしょうか。

     時に加工後に付いたシミは落としにくいと思っていらっしゃる方もおられるようですが
    全く逆です。どうぞご安心を!


    小夏さん、いかがでしたか?



     過大に効果を期待してもいけないわけですね。
     でも、私はしていた方が安心なので大切な着物には加工しています。
    特に母が「ガード加工してて良かった!」っていう経験をしていますので、
    そんなのを目の当たりにしていると、やっぱりしておいて正解かな・・・と思います。
    していての不便やトラブルは今の所ないですしね。(笑)

     あ、そうだ。
    先生?もしガード加工したものにシミが付いた場合、どのような対処をすればよいのでしょう?



     液状のものが水滴として生地の表面に付いた場合、
    乾いたティッシュペーパーやハンカチなどで、吸い取ってください。決してこすらないように!
     また食べ物などの固形物もこすらず、つまみ取るようにしてください。
    シミが残った場合、後は専門店に任せましょう。
    汗ジミについては専門店に「汗ジミ抜き」として依頼してください。



     基本的には加工してない着物と同じなのですね。

     先生!次のテーマなのですが、『色落ち』について知りたいです!
    以前、緋の長襦袢を着て歩いたとき、摩擦で足袋に赤い色がついてしまったんです。

     色の落ちるものにはどのようなものがあるのですか? 
    また何故、色止めに効果がないのでしょう?



     おやおや、最後に難しい質問ですね。
    ではこれは次回にお答えしましょう。



     お願いします!


    次回は、「■31■ 色落ちしやすい染め」です。お楽しみに!

     

    ※近年まれにですが、著しく撥水効力の弱いものが見うけられます。

    このような粗悪な加工は例外といたします。




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    大宮華紋森本(染色補正森本)

    ■29■ ガード加工で汗染み対策

    • 2010.12.13 Monday
    • 22:31
    JUGEMテーマ:着物 きもの



     前回、「汗染みの予防対策にガード加工を!」と述べましたが、
    以前{
    ■8■ (1) (2) } の2回に渡りガード加工について取り上げていましたね。
    今回はその補足として別の角度からも話してみましょう。

     まずは汗の対策として有効だと述べた理由からです。
    以前も説明した通り、
    ガード加工は水滴は弾きますが蒸気は浸透します。
    これは汗についても同様です。
    つまり流れ落ちる汗は弾くのですが、
    体内から蒸気として発汗したものは繊維に浸透するということです。


    この場合の蒸気として浸み込んだ汗は、
    ご家庭での霧吹きによる方法では落とすことはできません。

    それはすでにご承知の通り、ガード加工後は霧吹きの水滴は浸透しないからです。
     しかし、
    ガード加工していない着物に多量の汗が染み込むよりは、
    その量は比べものにならないくらい少なく、その分のメリットは大きい
    ということです。

     
    ガード加工済みの着物に蒸気として染み込んだ汗は、
    我々プロは浸透剤を併用し、さらにバキュームで吸引しながら
    シミ抜きガンの圧力で取り除くことができます。
    どうぞご安心を!



     ご家庭でも可能な対策で、汗の付きやすい衿や脇、そして帯下部分に
    市販の防水スプレーをかけておくのも、ひとつの方法かもしれませんね。
    その場合、袷なら裏からかける方が良いと思います。
    裏が汗で濡れなければ表も染みにならないからです。但し体内から出る汗だけの効果ですがね。

     しかし
    広範囲に汗をかかれる方はやはり正規のガード加工をお薦めします。
    市販のスプレーで広範囲に吹く場合は、ムラになったり、
    また火災の危険性や健康面でも問題が発生する恐れがある
    からです。

     ところで、
    ご家庭で部分的に防水スプレーをかけた着物の染め替え時には注意が必要です。
    通常の染めでは、スプレーをかけた箇所は染料が弾くため染ムラになるからです。
    必ず業者にそのことを伝えましょう。

    事前に分かっていれば対処は可能です。



     防水スプレーなんていう対処法もあるんですね。
    でも、直接着物にスプレーするなんて、なんだか怖い気が・・・。


     
    あははは、そうですよね。ではハンカチなどの小布でテストすれば良いのでは?


     さて、話は戻ってガード加工のお話ですが。
    ガード加工反対派のお客様からは次のようなことをよく耳にします。

    「加工によりせっかくの絹を化繊化している」
    たしかにそれは言えますよね。


    しかし、絹を日常着にする贅沢とはメンテナンスも含めてのことではないかと思うのです。
     江戸時代、絹を日常着にしていたのは武家や富裕な町民達です。
    メンテナンスは「御手入司(おていれし)」と呼ばれるプロ達。
    しかしそれも万全ではなく、結果として香や匂い袋などを用いざるを得ない生活をしていたのです。
    現代ではちょっと当てはまらないですね。



     絹の風合いを贅沢に味わうには、お手入れにかける時間や懐の余裕も必要というわけですね。
    私は汚すのが怖くて躊躇しちゃうタイプ。
    ガード加工はその迷いを払ってくれる安心材料です。
    先日も少々の雨の中、絹の小紋で出かけました。
    ガード加工、心強い味方です。



     私は様々な点でガード加工はメリットがあると思います。
    しかしそれについては賛否両論。
    特に風合いについては多少変わることも事実です。こればかりは生理的な問題ですのでね。

    ですが間違った情報にまどわされ、皆さんの中にはまだまだ誤解もあるようです。


    小夏さん、ガード加工について、次回もう1度分かりやすく整理してみましょうか。



     はい、そうですね。私も楽しみです。


    次回は「■30■ ガード加工を見直す」です。お楽しみに!

    ※近年まれにですが、著しく撥水効力の弱いものが見うけられます。

    このような粗悪な加工は例外といたします。



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    大宮華紋森本(染色補正森本)

    ■28■ 着物、日常着時代のお手入れ

    • 2010.12.06 Monday
    • 22:27


    JUGEMテーマ:着物 きもの
     

     ”汗抜きの大切さ”を課題にすると
    「では、毎日着物で生活をしていた時代はどうしていたのですか?」
    などの質問を受けることが多いです。

    確かに、その都度業者に頼んでいたのでは費用の点で問題が起きるのは当然ですね。
    では前回の最後に申し上げた「昔と今の着物に対する考え方の違い」から説明していきましょう。


     明治時代になって洋服が浸透してきたことによって、
    着物は日常着からフォーマル着へと変わっていきます。
    でも昭和の初期(戦前)までは庶民の日常はまだまだ着物でした。

    その頃の庶民の日常着はウールや銘仙などが主だったようです。
    衿の汗対策として掛け衿の取替えや、また衿に手ぬぐいを巻いたりもしていたようです。


     お手入れはと言いますと、
    自分で解き端縫いをし、水で洗い、
    あとは張り板や伸子などで張って乾かし、仕立てもしていたのです。

    父の話では、「手の早い人なら一晩で着物一枚を縫い上げた」とか。
    自分で解いて洗うことが前提だったので、縫い目も粗かったのでしょうね。
    その頃の着物の洗いや仕立ては花嫁修業の大切な一つだったのかもしれません。

     私の幼い頃、家には洗い張り用の張り板がありました。
    その頃はもう使っていなかったので、私は縁側に斜めに立てかけ、
    滑り台の代わりにして遊んでいた記憶があります。

    その斜めにした板に、父がケーブルカーを作って遊んでくれたこともありました。
    その時はまさか着物を張る板だとは思ってもいませんでした。


     ところで絹の染物などのお手入れは、
    やはり我々のようなプロ(染色補正)の手でなければなりません。

    現在の染色補正業の始まりは、江戸時代中期と考えられています。
    元々御所の衣装の御手入司(おていれし)から始まり、
    武家や富裕な町民の絹の染物を手がけていたとされています。

    現在、博物館などで見られる着物などがその類です。

    庶民の着物は残念ながら残っていません。
    何故なら庶民は着物として着られなくなったら、解いて布団や座布団などに作り替える。
    それが傷むとハタキや雑巾として最後の最後まで使ったからです。


     ではもっと時代を遡ってみましょう。

    ここに平安時代と鎌倉時代の絵巻の模写があります。
    いずれも井戸端で洗濯をしていますが、
    足で踏んづけて洗っているのは果たして着物なのでしょうか。

     
     クリックで大きくなります。(画像・京都染色補正組合より引用許可済)

    これは「京都染色補正組合」が平成2年に出版した『染色補正の技術・技法』に掲載されたものです。

    洗った着物をそのまま竿にかけている方が鎌倉時代のもので、
    そこには「麻布か又は藤づる等で織った布であろう。
    加工を施した高価な絹ではこうはいかない」と解説があります。

    どちらにしても被せ(きせ)などは取れてしまいますね。
    しかし当時の庶民の生活を考えると、それもごく自然なことだったのでしょう。
    今とは違い、もっと気楽に着ていたのは間違いありません。
    ※被せ(きせ)・・・縫い目に生地がわずかに被さるよう仕上げる和裁の技法。
    被せがかかることにより、縫い合わせたラインが美しく仕上がり、
    また、きせ分のゆとりが着用による縫い目への負担を和らげる効果もある。


     現在の着物の多くはフォーマルとして考えていますから、
    仕立ても着付けも綺麗に、をモットーとします。

    小夏さん、いかがでしょう。
    着物に対する考え方や価値観が昔と今と異なるのはこのようなことなのですね。


     そうですね。昔は日常に頻繁に着ていたのですから、
    汚れに対してももっと大らかでゆるやかに捉えていたのでしょうね。
    私の祖母はプロではありませんでしたが、家のものはほとんど自分で仕立てていました。
    家族の着物はもちろん、座布団、布団も当たり前。その作業を見ているのが好きでした。
    私は見た事がありませんでしたが、祖母の若い頃は洗い張りもやってたかもしれませんね。
    今ではもう叶いませんが、そんな話も聞いてみたかったなぁ・・・。

     しかし、現代ではシミや汚れにも敏感、最近では匂いにも神経質になってきています。
    家で洗えないのは分かるのですが、絹の染めの着物は魅力だし、
    せめて汗の対策などあればいいのですが・・・。何か良い方法はないですか?


     それにはやはりガード加工が有効じゃないですか?


     あ。ガード加工、有効なのですね!
    でも・・・ガード加工は嫌う方も多いですよね。


     確かにそうですね。
    では次回は「汗染み対策にガード加工は有効」について取り上げてみましょう。


     はい。よろしくお願いします!


    次回は「■29■ ガード加工で汗染み対策」です。お楽しみに!


    大宮華紋森本(染色補正森本)

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