■24■ 染め替えの実例

  • 2010.11.08 Monday
  • 22:49
JUGEMテーマ:着物 きもの
 
 今年の春ごろだったでしょうか。
父方の叔母より、25年ほど箪笥に眠らせたままだったという着物を預かりました。
淡い生成り地の若いお嬢さん向けの付下げ訪問着。

 最後に袖を通した後、ざっと汚れの確認をして仕舞われたのだとか。
しかし、久方ぶりに箪笥から出して広げてみた所、
とんでもないくらいにシミや汚れが出ていてビックリ!!
そんな状態で、シミを隠すのと同時に
現在の年齢に合った色目に染め替えましょうとなりました着物です。

染め替えの工程や成り行きなど、詳しいお話は景先生からお願いします。

染替え前正面  染替え前 

 はい。今回のクリーム地訪問着の場合は、
基本は黄変ジミを隠すため、かける色はカラシ色や茶色がベストでしょう。
しかしご本人は「色目は任せるが今の年齢に相応しく落ち着いた濃い色に」と希望されました。

 そこで私は染め屋に滅紫(けしむらさき)をかけるよう、依頼したのです。
※滅紫(灰色に近い濃い紫。染めのめやすに付けた色見本は、少しこげ茶がかったもの。)

 ところが翌日、染屋は次の理由で断ってきました。

     紫系だと、黄変ジミが残るかもしれない。
     模様の赤がより強調され派手になる。
     濃度の薄い芝の柄のほとんどが消える。

 染屋は長年の経験上で答えを出している。
それは十分わかりますが、私は三つの理由に対し次のように答えました。

     シミが残れば補正でカバーはできる。
     派手になれば金泥や、いぶし銀で色目を押さえることはできる。
     今の年齢に合せ模様は適度に消えたほうが良い。もし消えすぎれば金加工で補える。

 染屋には「責任は一切私が負うから思い切って進めるよう」促しました。
後日染屋から電話。
「上手くいきました! こんなにいい感じになるとは思ってもみませんでした。
今回は私の方が勉強させていただきました!」


 さて三つの問題点は、

     シミはほとんど見えなくなり、少し残った上前部分は補正作業で全く分からなくなった。
     えんじ色になった赤い扇は、金加工を施すことで色目は抑え、豪華さも出た。
     アクセントに金を用いることで今の年齢にふさわしい絵付けとなった。


 今回、色目は落ち着いた感じになりましたが、やはり訪問着のこと。
華やかさは残したいと再度申し出がありました。
それは金加工をふんだんに生かすことでお客様の希望にお答えできたのではないかと思います。

ベテラン染職人の心配は当然のことでありましたが、
私には補正と金加工で補える確信があり、それが今回の思い切りを決断させてくれました。

 今回一つ残念に思ったのは、
元の金くくり(金描きの線)の手が荒っぽく、模様に綺麗に沿っていません。
それを整えるため、金のラインが少々太くなってしまったということです。


 しかしいずれにしても、古いものが違った形で甦っていく様は、なんとも快感なものです。


 仕上がりはこちら。
(仕上がりの色は画像よりも濃く紫がかった茶色です。画像には本来の色が出ておりません。
実物をご覧いただけないのが非常に残念です。小夏)
染め替え後正面  染め替え後後ろ


 以下、染替え前、染め替え後の比較画像です。
染替え前(1)  染め替え後(1)


染替え前(2)  染め替え後(2)


染め替え後(3)


次回のテーマは、「■25■ 生地の伸縮」です。お楽しみに!



大宮華紋森本(染色補正森本)

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■23■ 染め替えの裏技

  • 2010.11.01 Monday
  • 22:24
JUGEMテーマ:着物 きもの
 

 前回は脅かしてしまったので、今日は染め替えのちょっとした裏技を紹介しましょうね。

 古い着物などの染め替えの目的の多くは「シミを隠す」「色目を変える」などですね。

 順序としては、まず着物を解いて反物状態に戻し、水に浸け洗剤で「染め下洗い」を行います。
これは色ムラを防ぐための前処理です。
特に薄色に染める場合は汚れを十分に取る必要があります。
濃い色にする場合は汚れを取るより、スレが出ないように最善の注意が必要です。

 付下や訪問着などはせっかくの模様を生かさないと意味がありませんね。
地色のみを染める場合は模様部分を糊伏せして引き染め(目引き)を行います。
また模様部分のみの彩色も可能です。
地染めはもちろん、模様部分も染料を用いる場合は元色より濃くなります。

 対象物が色無地なら色抜きをし、白生地に近い状態に戻すことが出来れば、
好みの色に染めることができます。
但し、解き洗いと色抜き代で新しい白生地が購入できることもありますから、その点はよく考えて。

 一番安く上げる方法は浸染(炊き染)による無地染です。
早い話が一色を上からかけてしまうのです。
無地はもちろん、小紋、付下や訪問着などの模様にもOKです。
(刺繍や染抜紋のあるものは例外)


 好みの色をかける場合、地色部分だけにとらわれないでください。
模様部分にかかる色も計算しなければなりません。

 例えば、赤い色を地味にするため、補色(反対色)の青緑をかけたとしましょう。
結果、白い部分(友禅の糸目部分なども)は全て、かけた青緑になるということです。
また緑色の部分があればより強調されます。

 若い時のもので、色を地味にしたい時はグレー色をかけるのが無難でしょう。
白い部分(友禅の糸目部分なども)は落ち着いたグレー色になります。

 染め替えの結果、もし模様部分が地味になり過ぎて派手にしたい場合。
あるいは逆に派手になり過ぎて地味にしたい場合。
どちらも彩色で補正することが可能です。
また金彩、銀彩加工でもその対応は可能ですし、趣が変わり見違えるようになります。
(但し補正や金彩加工は小紋などの前面模様の場合、コスト面で無理があります)


 最後に、金加工部分は染まりませんので注意しましょう。
濃い色をかけ模様を隠すつもりが、残った金のため印象が変わることがあります。


 これらの点についても、経験豊富なプロと十分に相談して進めてくださいね!


次回は、「■24■ 染め替えの実例」です。お楽しみに!


大宮華紋森本(染色補正森本)

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■22■ 染め替えのリスク

  • 2010.10.25 Monday
  • 22:33
JUGEMテーマ:着物 きもの
 

 先生。今回は染替えについて教えて下さい。
色が派手で着なくなった着物や頂き物で好みでない色の着物など、
染替えで色を変えて再び着られるようになるというのは
箪笥の肥やしにならず着物にとっても着る人にとっても嬉しい事だと思うのですが、
時折「上手くいかなくて悲しい思いをした・・・」なんて話も耳にします。
そういう話を聞くと私も残念な気持ちになるのですが、
染替えをお願いする際の注意点、また心構えなどありますか?


 上手くいかなかったというのは、「思う色に染まらなかった」
また、「アクシデントにより綺麗に染まらなかった」などではありませんか?

 前者は染め上がりが色見本通りではなかったということなのでしょう。
これは許容範囲なのか否か。
あるいは実際着物になるとイメージが違ったということもあるでしょうね。

 さて問題は後者です
古物の染め替えは思いがけないアクシデントもつきものだと思ってください。


 では起こりうるアクシデントの例を挙げていきましょう。

 古いシミを隠す目的で濃い色を選んだのに、その箇所に染料が吸い込んだり、
    また逆に弾いたりで、ムラになった。

  シミ落としの跡のスレていた箇所がよく見える。
    これは引き染の場合は正面からは濃く見え、
    浸染(炊き染)の場合は斜めからシラケて見える。

 浸染(炊き染)の場合、染色補正などで修正してあった箇所の染料が
    抜け落ちてしまうことがある。

染め色も思惑通り、ムラもなく綺麗に染まった。
    しかしシミを隠す目的のため色目を妥協しすぎ、つまらないものになった。

 私がよく耳にするのは以上のような内容です。
しかしまだまだ思いもかけないことが起こりうるかもしれません。

 どちらにしても染下洗いは必ずしておきましょう。(依頼の際確認しておきましょう)
これは染の前処理で、染める色が薄色、中色、濃い色など、
染めの濃度によって洗い方も変わってきますので、希望の色目や濃度なども提示しておきましょう。

古物の染め替えにはリスクが伴うことが少なくありません。
そのような場合は、「次の手立てを業者と共に楽しむくらいのゆとり

を持っていていただきたいですね。

 ちょっとしたスリリングも楽しいかも?


 はい!
その時の染まり具合(難が出た場合)を、次にどう補っていくかという対策が
職人さんの口から次々に出てくるのが面白い!
1度に上手く行かなくても、思っていた以上の出来栄えになったり。
その過程がまた楽しいのですよねぇ〜。(笑)



次回のテーマは、「■23■ 染め替えの裏技」です。お楽しみに!


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