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- 2021.08.24 Tuesday
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新品で未仕立てなのにも関わらず、
格安で売られている大半の商品には何か理由があります。
倒産品や単に古いなどその理由は様々ですが、
その訳を表示していない場合や販売側も気づいていない難物など、
仕立て上がるまで発覚しにくい場合が多々あります。
どちらにしても後にトラブルにならぬよう
購入の際には十分なチェックが必要ですね。
安く購入できるのは嬉しいですが、
安いのには安いなりの理由があるのですね。
そうです。では本日から数回に分けて
そのチェックポイントについてお話していきましょう。
項目は以下の4つです。
シミのチェック
色ヤケのチェック
染ムラのチェック
緑青のチェック
それでは、始めましょう!
シミのチェック
シミは比較的見つけやすいため、まず一番のチェックポイントとなるでしょう。
しかしシミと一口に言っても様々なものがあり、
簡単に直せるものもあればかなり困難な場合もあります。
特に訳あり商品については十分なチェックが必要です。
直すのに困難なものとは、変色した古いシミなどです。
付いた当初は見えないモノでも、そのほとんどはやがて黄色く、
進めば茶色っぽくなってきます。
またそのような変色ジミの予備軍についても気をつけなければなりません。
そして多くのシミは熱をかけることにより、落としにくくなりますからご注意ください。
では具体例をあげてみましょう。
カビ
最初は表面に白く粉が吹いたように出ます。
この段階では水洗いなどで綺麗に落ちてしまいます。
しかし気がつかずにおくと時間と共に黄色くなり、やがては茶色に変色してきます。
そうなれば漂白を必要とし高額な補正作業になってきます。
特に織物の多くは漂白による直しが困難であるため、
生地の両面にわたる十分なチェックが必要です。
汗染み
汗は乾けば見えなくなるということから、軽視されることが多いのです。
未仕立ての着物とはいえ油断は禁物です。
何故ならお店や展示会での試着の際に付着することも多々あるからです。
仮絵羽もののチェック箇所は、まず両胸の袖付け下あたりです。
変色してなくても水型のようなものが見えれば要注意です。
反物といえども安心はできません。
小紋や付下げなども着物の形に試着できますから要注意です。
お買い物される皆さんも試着の際には十分お気を付け下さいね。
変色するまでの汗は水洗いで落とせますが、変色してくるとそう簡単にはいきません。
口紅、ファンデーション
これらも試着時に付く可能性が高いため、新たに付けないようご注意頂きたいものです。
しかし化粧品の油性のシミはベンジンやシンナーなどで落とすことができるため、
その多くはさほど問題ではありません。
血液
知らない間に手を怪我していた。こういう時にうっかり付けてしまします。
付いて直ぐなら水で簡単に落とせますが、ここはプロに任せること!
下手をすると、水により血液が染まり込み、
生地は膨潤(ふやけ)をおこし擦れて直らなくなります。
さらに気をつけないといけないのは、
時が経ってなくても熱をかけると落ちにくくなるということです。
購入後の湯のしやアイロンは禁物です。
体液など動物性タンパクは、熱によって固まる性質があります。
決してお湯などでも洗わないで下さい。
クリーニング店でも着物専門でないところでは、
シミが落ちないままアイロンをかけてしまうという事例はよくあることです。
お店選びも慎重に行ってくださいね。
はい!
次回は、「■43■ 訳あり商品の見分け方(6)
【未仕立て品 <2:色ヤケのチェック>】」です。お楽しみに!
では今回はアンティークなど、かなり古いものの解き洗い張り(水洗い)についてです。
帯などの織物を水に浸けるのがタブーなのは皆さんもご承知と思います。
しかしアンティークとなると染物でも安心はできません。
アンティークは、第一に生地の劣化問題が挙げられるため十分な注意が必要です。
湯のしや洗い張りなどで生地が裂ける危険性が大きいのです。
カビの臭い消しとはいえ、うかつに水につけるのは非常に危険なことなのです。
また生地の劣化以外に、
アンティークの友禅染めは顔料(水彩絵の具)を用いた仕上げを施したものが多く、
それらは水洗いで取れてしまったり、泣く(にじむ)恐れがあります。
例えば、植物柄の細かい部分や細いライン。
松の荒枝(あらし)や花の葯(雄しべ、雌しべなど)。
また人形柄・人物柄の顔や着物のラインなどです。
業者でさえも経験が浅いと、
うっかり失敗を引き起こしかねないので十分な注意が必要です。
え!!
アンティークの友禅には、水につけると泣いてしまうものがあるんですか!!
それは充分に注意しないと危険ですね。
ん?でも・・・それじゃ、当時の人はどうやって洗ってたんですか?
高価な手加工の友禅染めは水に浸けて洗うようなことは考えてなかったかもしれません。
刺繍を施したものが多いことからも、
当時の高級ものはプロによる部分的なシミ落とし作業が主であったと思われます。
その点、織の着物や羽織、型友禅(例外あり!)は水に浸けても大丈夫です。
高価な手加工というと手描き友禅ですよね?
手加工と型友禅の見分け方ってどうなんでしょう?
そうですね。
言葉や文章でお伝えするのは少し難しいかもしれませんが、
できる限り説明してみましょう。
はい!よろしくお願いします。
型染(板場染め)は、反物を板に貼り、
色別に何枚もの染型の上から、染料に溶いた糊をヘラで乗せて染めます。
染料糊は生地の裏まで浸透しないため、色は裏まで染まりません。
従って裏を見れば型染だということが一目で分かります。
なるほど。一目瞭然なのですね。
あ。でも、仕立て上がりでは裏を見ることは出来ませんが・・・。
板場染めの見分けは簡単です。
決め手は同じ文様が繰り返されていることです。
当時は今の小紋とは違い、文様はかなり大きいですが連続文様には変わりありません。
肩や袖の山で文様の向きが変わったり、また合口が合わないのも決め手です。
次に型友禅の特徴のひとつに、
模様の周りの糸目(白いライン)の幅が揃っていないことが挙げられます。
これは板場染(生地を板に張って染める)であるために起こる型のズレが原因です。
文様の色もずれてはみ出していることもあります。
注意をすれば直ぐに見分けが付きますよ。
手加工では同じ模様の繰り返しはありません。
糸目の幅は揃って、彩色にも深みがあります。
また数多く見ることで、型友禅の文様は裏まで染まっていない分
色目が浅いということも分かってきます。
いずれにしても今の染物にはない特色が見られるのもアンティークの醍醐味ですね!
なるほど。見方が分かっていれば、誰でも見分けることが出来るのですね!
先生!それでは、例外として水に浸けられない型友禅って、どんなものなんですか?
そうそう、これ大事なんですよ。
この時代の型友禅は手加工と融合させたものもよく見受けられます。
型染でも刺繍や金加工、また水性顔料を使った仕上げの施されたものも少なくありません。
この場合は手描き友禅と同様の扱いが必要となります。
なるほど!
アンティークはその性質をよく理解していないと危険なのですね。
お手入れに預けるなら、先生のようにアンティークの性質をよく理解した、
経験豊富なプロにお任せするのが1番ですね!!
アンティークやリサイクル品の人気はまだまだ続いているようですね。
特にアンティークは着物雑誌やブログなどに着こなしや、古布のアイデア商品も紹介され、
新たな魅力で私達の目を楽しませてくれています。
そうですね。
一時は凄いブームでしたけど、まだまだ人気のようですね。
着物としてそのまま楽しむほかに、洋服へのリメイクや、小物、インテリアなど、
素敵なアイデアが沢山見られました。
その主な魅力と言えば、現代では見られない色使いや柄でしたよね。
どうしてあの時代は“今にない楽しい着物”などが作れたのですか?
それはね、明治期に洋装が浸透してきたことにあるのですよ。
日本国中が外国文化に目が向く中、和服業界のとった手段が模様の大きな改革です。
それは絵画的であったり、またその時代を反映した大胆な模様であったり。
アールヌーボーやアールデコの影響も大きいですね。
大正ロマンや昭和モダンという言葉、聞いたことあるでしょ?
化学染料が輸入され、それまで出なかった鮮やかな色も可能になり街は華やいだことでしょう。
当時の着物は私達に、その時代の遊びの心をたっぷりと満喫させてくれます。
また現代にはない加工方法や生地なども魅力の1つでしょうね。
さらに、時代を経ることで起こる“染加工の退色というマイナス面”も
「一つの味」として人々を魅了する要素じゃないでしょうか。
退色!そう。そうですよね!
当時、目の覚めるような鮮やかさだったものが退色して・・・
それを見た私たちが「いいわぁ」と言っている場合もありますね。
同じ着物を見ていながら、昔の人と私達とでは違う色合いで喜んでいる。
面白いですよね。
そうですね、作者の意図とは違うところで感動しているのですから。
前回最後、「光の種類で色目が異なる」に少し触れましたね。
これは訳あり商品に限らず衣料購入の際にとても大切なことです。
本題の「訳あり商品の見分け方」に入る前に
今回は光についてもう少し掘り下げてみましょう。
はい。よろしくお願いします。
人工照明というのはそれぞれ、その使用目的に合わせて作られるわけです。
例えばお肉屋さんのショーケースには赤味の光。
野菜売り場では青味の光。
これが逆だと鮮度は著しく落ちたように見え、食欲をそそりませんね。
色の演出はそれだけ重要であり、また間違えればとんでもないことにもなります。
そうそう女性ならば、青白い「昼光色」の蛍光灯でメイクをした場合、
太陽光では本人が思った以上に赤味になる危険性があるんですよ。
私は若いころにこのような失敗がありました。
太陽光の入らないデパートで衣料を購入していた時のことです。
家に持ち帰り太陽光で見てはじめて、思った色と違うことに気がつくのです。
そういうことが続たため、衣料購入は表通りに面しているメンズショップに切り替えました。
その店は雰囲気を優先していたので店内の照明はシャンデリアや白熱電球でしたが、
購入時には必ず表に持って出て、色を確認したものでした。
しかし太陽光も厳密にいえば、時間帯や季節によって色の見え方(演色性)が異なります。
写真家は風景を写す際に、それによる色の差をカラーフィルターで補正します。
色の見え方は、人工照明となるともっと複雑です。
従来からの白熱電球・スポットライト・水銀灯。
また最近増えつつあるクルマのデスチャージ(白色)やLEDなど。
特に我々の生活に密着している蛍光灯だけでも
白色・昼光色・昼白色・電球色・自然色など、種類がことのほか豊富なのですね。
これら全て、色の見え方が異なるのは言うまでもありません。
前回小夏さんのおっしゃった「自然光で見られるのが1番」?
確かに「太陽光が正しい」としましょう。
しかし実際着物をお召しになるシーンというのは太陽光の下が多いのか否か?
そう考えれば着物を含めた衣料の試着室では、自然光はもちろん、
他に何種類かの人工照明の切り替えが可能な設備が必要なのではないでしょうか。
確かにそうですね・・・。
着物を着て行く場所、目的。
実に様々でその時々の光線の違いで色合いも違って見えるわけですね。
けれど、その着物を手にする時には着用場所のことまで頭が回りません。
手にした時に感じた色合いで判断してしまいますよね。
そう考えると、基準とするのは自然光での色合いが1番いいのかな・・・と思っていたのですが。
う〜ん。難しいですね・・・。
一応、私が着用するときには、屋外・屋内どちらがメインか、
また周りの環境・風景はどうかを考えるようにはしています。
食事などがメインの場合、最近は電球色のお店が多いですよね。
そんなことも頭の隅に置いてはいます。実際にはあまり深く考えたりはしませんが。
ところで染物の場合、光の種類が変わると
全てが赤味、青味、黄味などがかぶったように見えるわけではありません。
染料の種類が異なれば光の違いにより、個々の色の見え方も微妙に変わるのです。
例えば難を補正する染料は元の染めの染料とは異なるので、
光が変われば直した跡が見えてくることもあるのです。
我々がもっと意識しなければいけない問題なのですが、全てをクリアするのは難しいですね。
ですから難を出さないものづくり、
またその後の管理にも気をつけないといけないということです。
光の種類だけでなく染料の種類もですか!
色の見え方と言うのは実に複雑な要素を含んでいるのですね。
う〜ん。「これで解決!」と簡単にはいかない訳だぁ・・・。
また難を補正する際の染料と、元の染料との違いも「なるほど!」でした。
染め難を直すお仕事というのは、
色味だけでなく光線の違いも頭に入れておかねばならないんですね。
その感覚、凄いなぁ・・・・。
デジカメやカラーコピーでお気づきの方もいらっしゃると思いますが、