■37■ 黒染め実情を考える

  • 2011.02.21 Monday
  • 22:17
JUGEMテーマ:着物 きもの


 これは、あるご婦人が喪服のお手入れを2枚持ち込まれた時のことです。
1枚はご本人のもの。もう1枚はお嫁さんのものだそうです。

「うちの嫁は行儀が悪いのでしょうか? 方々こんなに白く汚して! 
どのような着方をしていたのでしょうね?」

 拝見すると、お嫁さんの喪服は白く擦れた跡がかなりの範囲で見られました。
特に手を持っていく箇所や、もたれかかったと思われる箇所に多く確認できます。
 私にとってこれは日常よく目にすることであり、ご婦人には次のように説明しました。

 「この喪服は最近のもので、『濃染黒・のうせんぐろ』といって黒をより黒く見せるため
表面に樹脂加工が施されたものなのです。
 この樹脂が生地の表面を硬くするため弾力がなくなり、擦れた跡が戻らなくなったのです。
これは毛羽状になるスレではなく、生地の表面が押さわった状態で白けたものです。
どなたがお召になってもこのようになります。お嫁さん、決してお行儀が悪いのではありませんよ。」

 続いてご婦人の喪服を拝見しました。
 昭和半ば頃のものでしょう。お嫁さんのと比べると黒は浅く感じますが本来の染の黒でした。
もちろん、こちらには白けなどはありません。衿と袖口の汚れのみで、簡単に直るものでした。

 さて、このご婦人。
ご自分の喪服は安物で、お嫁さんの方が上物だと勘違いされていたようです。

 無理のないことかもしれません。
従来の黒と比べると今の黒は圧倒的に深みがあるので肌の色も引き立ちます。
 しかし非常に摩擦に弱いため、お客様のお手元に届くまでにもすでに白けてしまいます。
例えば販売会や紋入れ加工中。仕立て中などでは最も起こりやすいのです。

 この白けは樹脂が原因であるため直すのは少々困難。
例え直ったとしてもこの症状は繰り返される訳なのです。
 濃染黒は喪服や男物の黒紋付などの無地物に限ります。
黒留袖(江戸褄)やその他模様を配した黒地の染物には使われません。


 困りものですよね。
 見た目が美しくても、着用で白けて目立ってしまうというのは
着ていて気持ちのいいものではありません。
 近頃このような黒が主流のようですが、どうして改善されないのでしょう?


 私もその疑問が続いています。
 思うに、売れていく喪服の数は多いのに、その数に反して
この類の苦情が製造元まで届いていないのではないのか、ということ。
 それは着用されるより、タンスの中に眠っている方が圧倒意的に多いからではないのか・・・。

 販売側に尋ねると「売るのが目的ですから、見た目の黒の色が勝負です」と返ってきます。


 え!!売れればその後のことはどうでもいいって事ですか?
着物は「着るもの」なのだから、着用時にトラブルが出ては意味がないのに・・・。


 あ!なるほど。
そういう実情があるから、
先生のところで黒紋付を依頼した時、黒を選ばせてもらえたのですね。


 その通りです。
現在の黒の実情をご説明した上で
濃染黒に使われる樹脂の量をお客様に選択していただきます。

簡単に言えば、

     既製品のまま。黒は濃いが白けやすい
     樹脂を全く入れない従来の黒
     白けが目立たない程度に樹脂を入れる

結果、ほとんどがの「程よく黒い」を注文されます。


 黒染めの性質をよく理解し、リスクの説明を受けられるお店を選ぶべきなんですね。
着用してから「こんなはずじゃなかった」では悲しいです。
 呉服屋さんでも「より黒が深く美しい」は売り文句のようです。
でも、それだけではいけないということなのですね。

 先生、昔はこのようなことはなかったんですよね?


 昔の黒は確かに浅かったですね。
しかし、より黒を黒く見せる方法として、生地で表現していたようです。
 例えば繻子とか、シボの高いちりめんとか。ただしちりめんは縮みやすいですが。
高級ですがビロードなんかは起毛ですから特別深みが出ますね。


 そういえばアンティークで時々見かけますね。
昔は生地の織り方での工夫をしていたのですね。

 ところで・・・。
 今では熱も冷めたのですが、少し前まで大のアンティークファンでした。
 アンティークの着物は今にない大胆さで魅力的なのですが、
求めようとするといろいろと失敗が付き物のようです。

 先生!次は、メンテナンスのプロの観点から、
アンティークやリサイクル着物の上手な見極め方を教えていただけませんか?


 ほほぅ。これはかなりの情報量になりますよ・・・。
では、リクエストにお答えして考えてみましょうか。


 はい!ありがとうございます!!




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