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    ■31■ 色落ちしやすい染め

    • 2011.01.11 Tuesday
    • 22:46
    JUGEMテーマ:着物 きもの
     

     今日は前回の最後に出た課題、「色落ち」についてです。
     前回、小夏さんの経験として
    「緋色の襦袢の色が白足袋に色移りした」とありましたね。
    これは摩擦で色が落ちた典型的な例です。


     しかし私のところに持ち込まれる最も多いものは、摩擦に汗が伴った色落ちです。
    濃い地色の着物が薄い色の帯や襦袢に移る。
    またはその逆の、濃い色の帯や襦袢が薄い色の着物に色移りしたケースなどです。
     いずれも落ちた方はスレも伴いシラケが残ります。


     ところが、中にはそのシラケ部分を
    「汗の塩分で白くなったので汗落としをお願いします」
    とおっしゃる方もいます
    が、これは間違いです
     汗で濡れたところに体温と摩擦で摺れて起きた「スレ」という現象です。


     また他にも、我々が行う染み抜きや補正作業中でも色が落ちることはあります。
    その場合は対処しながら進めるか、または中止して別の手段を取ります。



     さて今回のテーマの発端になった問題です。
    業者からの依頼で「色が落ちるからガード加工をしておいてください」
    と言われることがありますが、私の答えは前回も申したとおり
    「水濡れによる色落ちは防げますが、摩擦による色落ちは防げません」です。



     ガード加工は生地にコーティングをするようなイメージがありますが、
    摩擦による色落ちは防げないのですね。 何もかも期待し過ぎてはいけない訳ですね。
     あ、そうだ。
    そもそも色が落ちるものと、落ちないものがあるというのはどういうことなのでしょう?
    先生、教えていただけますか?



     はい、では「色落ちとはどういう現象なのか」から説明していきましょう。

     染物の場合、染料が生地に染まる分量には限りがあります。
    それを超えると、超えた分量は水濡れや摩擦で落ちやすくなります。
     例えるなら、枡に豆を山盛り入れた場合、
    枡からはみ出して盛り上がった分は、揺すったり、
    また何か平らなもので撫でると落ちてしまいます。
     つまり、枡の規定量しか入らないのです。

     染めもこれと同じで、繊維という枡に収まる分量しか染まりません。


     絹を染料で染める場合、引き染めのでは着色後に「蒸し」で熱を与え発色、定着させます。
    しかし染まりきらない分量は水元(みずもと・水洗い)で流れてしまいます。
     浸染め(焚き染め)の場合は熱した染料に浸けて染めます。


     いずれにしても、染料は熱によって発色・定着しますが、
    これが十分でなかった染料は粒子として繊維の表面に残ってしまいます。
    この残った染料の粒子は水分などで溶けやすく、
    摩擦などでも落ちてしまうことがあるのです。


     なるほど! ガード加工では染料が水分で溶けて色落ちすることは防げても、
    摩擦で色が移ることは防げないというのがよく分かりました。
    では、どのような色が落ちやすいのですか?



     落ちやすい色というのは、染の際の熱処理の温度が低い場合や、時間の短い場合。
    また繊維という限られた器に入りきらない分量の染料を必要とした場合に起こります。
     前者の場合は温度を上げる。または時間の延長で解決できます。

     問題は後者です。

     まず何故染まりきらない多量の染料が必要なのか。
    それは濃い色を出す場合です。
    特に濃く鮮やかな色目に染め上げたい時は、鮮やかな色目の染料を多量に必要とします。
     
    戦前までによく使われていた紅裏は典型的な例ですね
    また沖縄紅型などは顔料が含まれているため色落ちは免れません。


     えっ!どうして顔料は色が落ちるのですか?


     顔料は染料とは違い、繊維に粒子がくっ付いていると考えてください。
    つまり繊維に染まり込んでいる訳ではないのです。



     あ、なるほど〜。
    染まり込んでいる訳ではないから、水濡れや摩擦で落ちやすいのですね。
    沖縄紅型は高価な着物ですが、色落ちの心配があるんですね...。



     価格は必ずしも衣料としての品質を表してはいません。
    顔料は粒子ですから生地の光沢を消します。
    つまり透明感が特色である染料にはない重厚感が顔料にはあるのです。

     本物は本物にしか出せない感覚を売りにしているのですね。

     紅型でも京染めの染色法を取り入れている場合は色落ちが少ないと思います。
    そして、本物といえば忘れてならいのが本場大島です。
    植物染料を泥で焙煎する大島紬の場合も色落ちは免れませんからご注意ください。



     おぉ〜。本物を持つには、その本物を理解しないとダメなんですね。


     そうですね。欠点を超える程の魅力を持っているのが本物ではないでしょうか。

    それから、昭和初期までのアンティークと呼ばれている友禅染には
    顔料で仕上げが施されたものが多いです。
     昔は花のにおい(葯・やく)や松の荒枝(あらし)などに、
    絵師が水彩の絵の具で仕上げをしていたのです。
    人形柄の顔などにも墨や顔料で仕上げを入れていましたから、
    これらは摩擦や水濡れなどで簡単に落ちたり、にじんだりします。



     え!そうなんですか。
    アンティークの着物も気を付けないといけない事が沢山あるんですね。



     その点、現在では絵師による仕上げのものはかなり減りましたし、
    たとえ仕上げが施されたとしても、今の顔料はアクリルが主ですから
    色落ちの心配はほとんどありません。
    衣料として安心して洗いや染み落としができるよう改善されてきたのでしょう。

     しかし、アンティークに見る友禅や仕上げはいつ見ても素晴らしいですね。
    それは水彩の顔料や墨は筆の滑りがいいからです。
    線が実に伸びやかで生きいきしています。

    やはり本物ですからね!


     あぁ、私もそんな本物の良さや味を理解し、より味わえるようになりたいです。



    次回は「■32■ 紋の色落ち」です。お楽しみに!



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