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    ■25■ 生地の伸縮

    • 2010.11.15 Monday
    • 22:58
    JUGEMテーマ:着物 きもの

     
     古い着物などを解いて、洗い張り(水に浸ける)後に仕立て直す場合、
    「生地の寸法が足らないから、できるだけ湯のしで丈と幅を出して下さい」
    と、このような依頼が時々あります。
    古い着物を譲り受ける場合や、サイズを大きくする場合が多いですね。



     え?
    生地の寸法が足らないから湯のしで伸ばすんですか???
    昔の人よりも体格が良くなっていますから、寸法が足らない場合は多いですが、
    生地を伸ばして丈や幅を出しても、仕立てた後にも生地は元の寸法に戻ろうとしますよね?


     はい、その通り! 
    また新しいものでも
    以前の着物が仕立て後縮んだから
    という理由で仕立て替える場合、
    「あらかじめ湯のしで丈や幅を出しておくよう」依頼があります。



     え!!!
    仕立て後縮んだという前例から、あらかじめ丈や幅を出してておく???


     小夏さん。
    縮みやすい生地は仕立てる前に「地詰め」で、
    できるだけ生地を縮めておかなければならないのに、これでは全く逆でしょ!
    しかもこれらは業者とのやりとりなのですから全く呆れてしまいますね。



     え!業者さんなんですか!?
    仕立てでは、仕上がり後縮んで型崩れしないよう
    仕立て前に「地詰め」で生地を出来るだけ縮めるというのが常識と思ってましたが・・・。
    仕立てに入る前の湯のしの段階で「伸ばす」というのは、仕立屋とは逆のことをしているわけですね。



     以前、「某ガード加工をかけると縮むから、必ず仕立て前にしてください」
    と、このようにおっしゃる仕立屋さんがありました。
     この某ガード加工業者に問い合わせると「加工後の乾燥時の熱で縮む」というのです。
    なるほど、これは仕立て前の反物状態なら地詰めの作業の手助けになる。

     しかし、仕立屋が地詰め工程に手を抜いて仕立てれば、
    この某ガード加工では仕立後の加工で縮んでしまうのは当然のことです。



     う〜ん。確かにそういうことになりますが、仕立て前の地詰めにも限度があります。
    限りなく縮んで用尺が足りなくなったり、風合いが著しく変わったり、などなど、
    思うように地詰め出来ない生地もあるのですよ。



     そういえば鬼シボちりめんなどは、限りなく縮んでいきますね。
    こういう類の生地は和裁士の判断にゆだねられる訳ですね。

    時折、ちりめんでは丸洗い後のプレスでシボが立つことがあります。
    これは本来の自然な風合いに戻ったのですが、
    お客様からすれば縮んだように見えるかもしれませんね。

     もうずいぶん前ですが、繻子地で作品を作ったことがあります。
    この作品、困った事に着用の度に表の繻子が伸びてくるのです。
    この経験から、繻子は地詰めではなく逆に伸ばしておかないと駄目だということが分かりました。



     生地によって性質もいろいろですね。
    その性質を見極めて適切な対応が出来るようにならないと。
    まだまだ勉強です。

     あ、それから。これは着物の構造上の問題ですが、表地と胴裏、八掛という
    織り方も伸縮性も違う生地を、表裏ピッタリ同じ丈と幅で縫い合わせているわけですから、
    それだけで無理があることは分かっていただけるのではないかと思います。
     時間の経過や気温、湿度、着用時の体温や湿気、汗などで
    それらが狂ってくることがあるのは納得できますよね。
     ※(洋服の場合、スカートやパンツなど裏地と表地は裾で縫い合わせてありません。
    着用や洗濯など、生地への刺激や時間の経過などで狂いが出ることを見越してのことと思います。
    また、ジャケットなどは裏地にかなりの余裕を持って縫い合わせます。
    これは、着物と違い体のラインに沿って立体的に仕立て上げるため、
    体の動きや表生地の伸縮を裏地が邪魔をしないよう遊びを入れた結果と思います。)



     なるほど、洋服は理に叶っている訳だ。
    ところが着物には無理があるってことになりますね。

     う〜ん、これは日本の長い歴史が絡むかもしれないね。
    昔の家屋は今より寒かったと思うので着物は防寒の役割も大きかったと思います。
    つまり「袷」とは中に綿を入れるという必然性から生まれたのかもしれませんね。

     裾を引きずらなければならないくらい長いのは足元を冷やさないため。
    そのまま寝てしまっても大丈夫という知恵なのかもしれません。
    夜着などはその典型ですね。



     ですから着物が日常着の時代には、各家庭で狂いを手直ししながら
    手を掛けて着ていましたよね。
    現在のように全て職人任せではなかったはずです。



     そういうことですね。
     現在は和裁士に任せるのが普通ですが、
    仕立てる側と着る側がもっと近づく必要があると思います。
    和裁士は着る人の情報が詳しく分かれば分かるほど、
    そのお客様に適した着物に仕立て上げることができますからね。

     これは我々のメンテナンス業も同じことです。
    お客様の顔を思い浮かべながらの仕事はその人に合った結果を出せますからね。
    私はネットのお客様にはせめて声だけでもと思い、
    できるだけ電話での打ち合わせを心がけています。

     これはお互いの安心材料にもなりますね。



     その通りですね。
    ただ寸法表を渡されるだけよりも、
    その方のお顔や雰囲気、体つきなどを知っていた方が細かな修正が出来ます。
     同じ身長・体重の方だから各部同じ寸法の取り方でよいかといえば、
    皆さんそれぞれ顔が違うように、肉付きの違いなど体型にも様々な違いがありますもんね。

     それに何より楽しいですね。面識があって直接ご依頼くださるお客様は
    そのお顔や着姿を思い浮かべながら縫い進めるのがとても楽しいです。



     効率主義が「自分だけのために」という贅沢を忘れさせてしまったこの時代。
    私達はこの「人の温もり」をこれからも大切にしていきたいですね。




    次回は「■26■ しみ抜き用霧吹き」です。お楽しみに!


     

    大宮華紋森本(染色補正森本)

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